報道でも取り上げられておりますが、新型コロナウイルス感染の拡大からワクチン接種を先延ばしにされているご家庭が増加しているようです。ワクチンで予防できる疾患は限られており、罹患(病気に罹ってしまうこと)や重症化を防ぐために大切なことですから、ワクチンで防げる病気については、定められた時期に遅れないように接種を行うことをお勧めします。当院では予約制を敷いており、来院されたあとも一方通行でほかの方との接触も極力少なくしております。ワクチンのスケジュールも含め一度ご相談くださいませ。
さて、新型コロナウイルス感染症についてもワクチン開発が切望され、各国でその研究や治験(ワクチンなどを含めたお薬が実際の現場で使用できるものかどうか検証する作業)が急ピッチで進められていると報道で目にされることもあるかと思います。
今回のように新しい感染症の場合、数多くの方々が感染され、数多くの方々が亡くなってしまう事態が世界的に起こってしまうことがあります。これは今回の新型コロナウイルス感染症に限らず、麻疹(はしか)や水痘(みずぼうそう)、ヒブ、肺炎球菌、B型肝炎などといった様々な感染症についても、罹患率や死亡率は異なるもののワクチンが開発される前(接種がしっかり行われなければ現在も!)には多くの方々が罹患し、命を落としたり、後遺症に悩まされたり、といったことが起きているわけです。
麻疹(はしか)を例にとってみましょう。現在日本ではワクチン接種率が95%前後という状態で、2015年には土着株の感染例がなく排除状態にあるとWHO(世界保健機関)から認定されております(輸入感染例は認められています)。しかし全世界を見れば麻疹の感染はいまだに危機的な状況で、2018年は、感染が980万件、死者が14万2000人となっております(増加傾向)。ワクチンが開発されていても、接種が国民全体に浸透して接種率が向上しなければ数多くの方が罹患し、亡くなる状態に陥ってしまうのです。日本の麻疹の状態に目を向ければ、ほとんどの方々が接種をしてくれているから、麻疹の排除状態が保てているのです(ワクチンによる集団免疫の効用)。
一方、「麻疹なんて過去の病気だ、ワクチンなんて異物をからだに入れたくない」、「ワクチンの副作用が心配だ」とワクチンを受けないという考え方(ワクチン忌避(きひ))があります。忌避する理由は上記以外にも様々に挙げられます。日本の現状で麻疹について考えれば、国民のほとんどの方が接種され集団免疫の状態になっているからこそ、ワクチン忌避の考えで接種されていない方々もその感染から守られているわけです。
そして新型コロナウイルス感染症については、現在世界で300万人以上の方が感染され、20万人以上の方が亡くなっている状況です。感染力の強い新しい感染症が出現し、ワクチンがなく、集団免疫が形成されていない状況では、現在のような事態に陥ってしまうことを私たちひとりひとりのこととして実感されるわけです。
ワクチンですべてを解決できるわけではもちろんありませんが、今だからこそ、いま一度、ワクチンの大切さについて考えてみてはいかがでしょうか。