先日のフィギュアスケートの大会で、羽生選手が直前練習で他国の選手と衝突し、頭部や顔面を打撲したなかで競技を続行され、見事に2位に輝くスケーティングをされました。強靭な肉体と精神力に裏打ちされた演技は観る方の心をうちました。しかしながら脳震とうを起こしていた可能性も指摘されていたなかでの競技続行には、続行させるべきではなかったという意見も出ており、また競技会の安全対策について改善を求める声が出ております。
日本脳神経外科学会からは、スポーツによる脳損傷を防ぐための予防策が公表されております。これは、頭部打撲が起こりうるスポーツ競技、武道などで死亡事故などが起こっていることを受けて、脳震とうを起こした場合は、ただちに競技や練習への参加をやめることなどを呼びかけています。
脳震とうは、頭部を打撲などした際に急激に起こる一過性の脳機能の障害です。頭痛や気分が悪いなどの症状は短時間でなくなることが多いのですが、そのまま競技や練習を続けることで、脳を覆う膜と脳の間に出血して血がたまる「急性硬膜下血腫」などの脳損傷を起こす恐れがあります。
そのため学会が公表した予防策では、競技や練習への復帰については、十分に体を休め、脳震とうの症状が完全に消えてから行うよう求めています。ウォーキングなどの軽い運動から始めて様子を見ながら、少なくとも1週間かけて徐々に行うなどと指導されています。
幼小児でもスポーツ競技に参加される方もいらっしゃいますし、遊んでいて頭部を打撲することもあります。また乳児がベッドやソファーから転落し頭部を打撲することもしばしばみられます。「顔色が悪い」、「反応が悪い・ぼーっとしている」などの症状みられる際には競技の中止、速やかな受診をこころがけましょう。